耳鳴りの原因と治療方法

耳鳴りがする・・・そんな時は

概要自分にしか聞こえない耳鳴りは、自覚的耳鳴といい、耳鳴りのほとんどを占めます。また、他人にも聞くことのできる耳鳴りは他覚的耳鳴といいます。他人にも聞こえるといっても、ごく小さな音が出るだけで、オトスコープというゴム管を医師と患者様が片側ずつお互いの耳に入れることで何とか聞こえるというレベルです。原因は耳の周りの筋肉の痙攣や血管の雑音などで、聴覚に直接関係ない部位の異常なので、難聴を伴うことはありません。自覚的耳鳴には、難聴を伴うものと伴わないもの(無難聴性耳鳴)があります。耳鳴りの治療は、原因となっている疾患を治療するのが先決ですが、聴力に変動がなく耳鳴りだけが続く場合は、耳鳴りそのものが治療の対象となります。

原因

音は、外耳道(耳の穴)、鼓膜、中耳、内耳、聴神経という順で伝わり、最終的に大脳の聴覚中枢で、音として感じ取られます。耳鳴りは、この音が伝わる経路のいずれかに異常があるために起こります。そのため、耳鳴りの原因はさまざまですが、一般には内耳の障害を契機として起こるものが多いとされています。
音は空気の振動ですが、その振動が内耳の蝸牛に伝わると、神経を伝わる電気信号に変換されます。一方、内耳の障害などで本来の外部からの振動の刺激とは関係のない異常な信号が内耳で発生するのが、耳鳴りの元になります。

診察

問診で耳鳴りの程度や、難聴やめまいを伴うのかどうか、生活へ支障が及んでいる程度などを確かめます。視診では耳の中、特に外耳道や鼓膜の様子を確かめます。

検査

難聴があればその治療が優先されるため、聴力検査は必須です。耳鳴りの音質や大きさを客観的に測る耳鳴検査もありますが、最近では以前に比べて重んじられなくなっています。近年では客観的な耳鳴りの程度を知るよりも、患者様本人が耳鳴りをどれほど感じているかという主観的な程度の方が重要とされているためです。また、治療の目標が耳鳴りそのものを止めることより、耳鳴りがあっても意識しないよう自身をコントロールできるようにするという背景もあります。そのため、最近の耳鳴診療では、耳鳴りの程度を測る指標としてTHI(Tinnitus Handicap Inventory )という問診表を使って、耳鳴りの生活への支障の程度をスコア化したものを、耳鳴りの重症度や治療効果の判定に活用しています。

考えられる疾患

外耳に原因があるもの

耳垢栓塞

耳垢が詰まり過ぎると、耳を塞いで「耳垢栓塞」と呼ばれる状態になり、難聴を引き起こします。それを無理に取り除こうとして耳かきで傷つけてしまい、外耳炎になってしまうこともあります。耳垢の除去は保険診療で行うことができますので、耳掃除だけでも遠慮なくお越しください。
治療では、顕微鏡で耳の中を見ながら、専用の器具で耳垢を取り除いていきます。痛みもないため、耳掃除のために半年に1回程度のペースで定期的に来院される方も多くおられます。

外耳炎

外耳は、耳介と外耳道からなり、外耳道は外側半分の軟骨部、内側半分の骨部に分かれます。外耳道には定在菌と呼ばれる細菌や真菌(カビ)が常に存在しています。通常はその数のバランスが保たれているために炎症は起こらないのですが、何らかの理由でそのバランスが崩れると、ある菌だけが増殖していまい、感染を起こします。軟骨部の皮膚は、皮脂腺や毛嚢があり細菌感染が起きやすい場所です。また真菌は骨部外耳道に生じることが多いとされています。
外耳炎の原因としては、耳そうじなどによる皮膚の損傷、中耳炎からの耳漏刺激、点耳薬などの薬物刺激、アレルギーなどが挙げられます。
症状は疼痛、かゆみ、耳だれなどです。炎症による角化物(耳垢)が堆積したり、耳だれが溜まったりすると、難聴や耳閉感を伴うこともあります。
治療は基本的に局所の清掃、消毒です。感染が疑われる場合には抗生剤の点耳薬が処方され、真菌が認められる場合には抗真菌剤を使用します。炎症の程度が強い時はステロイドの局所使用が有効な場合がありますが、副作用の点から短期間の使用に限られます。
かゆみが強い場合には、抗アレルギー剤や抗ヒスタミン剤、抗不安剤などの内服薬が処方されることもあります。外耳炎は状態によって治癒までに時間がかかることもあり、頻回の通院による局所処置が必要となるケースもあります。
耳そうじのやり過ぎで外耳炎が起こることもあります。特に竹製などの耳かきで何度も皮膚をこすると、皮膚の表面がけずれて滲出液が生じ、細菌が増殖しやすくなってしまいます。結果として、耳のかゆみが生じ、ますます耳をこすってしまうという悪循環が生まれます。ごくまれですが、頻回の耳そうじによる慢性刺激が原因と考えられる外耳の癌の報告もありますので、耳そうじはやり過ぎず、入浴後は綿棒で耳の穴の入り口付近をぬぐう程度にすべきでしょう。

外耳道異物

外耳道は25~35㎜のS字の筒状になっており、外側半分が軟骨部、内側半分が骨部に分かれています。外耳道は外耳孔を通じて外界に開放されているため、まれに異物が入る可能性があります。小さなお子さんは、小石やビーズ玉、玩具の銃の弾などが入りやすく、大人は耳掻きや綿棒の先端が耳掃除中に折れて残ってしまうことが多いようです。また、昆虫などの生物が外耳道に迷入してしまうこともあります。
異物が入ると、耳の痛み、耳鳴り、違和感、出血などが起こります。治療で異物を摘出しますが、外耳道の突き当たりは鼓膜ですので、鼓膜を損傷しないように気をつけなければなりません。ほとんどの場合は外来で摘出可能ですが、疼痛が激しい場合や小さなお子さんの場合は入院して全身麻酔下で摘出することもあります。
もし耳の中に異物が入ってしまったら、無理に取ろうとせずにすぐに当院までご連絡ください。綿棒などで取ろうとすると、かえって奥まで押し込んでしまうことがあり、摘出が困難になってしまいます。

外耳道閉鎖

外耳道閉鎖とは、先天的に外耳道が閉鎖したもので、耳介の奇形を伴います。耳介が非常に小さいか、ほとんど形成されず(低形成)、外耳道がなく閉鎖した状態です。また、中耳や内耳の奇形や低形成を伴うことがあります。さらに、非常に高度な伝音性難聴になります。
外見上問題となる耳介の奇形や低形成に対しては、幼児期に形成外科による耳介形成術を行います。両側性の外耳道閉鎖など聴力改善を必要とする場合は、外耳道形成術が必要です。ただ、この手術は難易度が高く、再建された外耳道が再狭窄したり、再建された鼓膜が浅い位置に移動(鼓膜浅在化)することもあり、結果として目的の聴力が得られないケースもあります。

サーファーズイア

サーファーズイアとは、慢性の冷水刺激によって外耳道の骨増殖が起こり、外耳道の狭窄が生じる疾患です。サーファーに発症することが多いため、サーファーズイアという名前がついています。病理学的には外耳道外骨腫または外耳道骨腫と呼ばれています。
狭窄の程度が軽度な場合には自覚症状はほとんどなく、狭窄が高度になってくると、耳垢が溜まったり耳垂れが出たりします。外耳道が完全に閉鎖してしまうと難聴(伝音難聴)が生じます。こうなってしまうと鼓膜がまったく見えないので中耳炎の処置ができず、急性乳様突起炎を引き起こし緊急手術が必要となるケースもあります。
治療法は、手術による増殖骨の除去です。また、冷水刺激により骨増殖は増進するので、予防策として冬期のサーフィン中止や型を取った耳栓の装用が有効です。

中耳に原因のあるもの

急性中耳炎

急性中耳炎とは、細菌が中耳腔へ感染することによって起こる中耳炎です。ほとんどの場合、鼻の奥(上咽頭)の細菌が耳管を経由して中耳腔へ侵入することで感染します。急性中耳炎の患者様にお子さんが多いのは、お子さんは耳管が大人と比べて短く真っすぐであり、細菌が中耳へ侵入しやすいためといわれています。
急性中耳炎は多くの場合、風邪と同時に発症します。主な症状は耳の痛みや耳だれです。感染がひどく中耳腔に膿汁が溜まってしまうと、痛みが激しくなり、発熱することもあります。
このところ、通常の抗生物質に抵抗する難治性の急性中耳炎が増加しています。安易な抗生物質の投与による細菌の耐性化(特に肺炎球菌、インフルエンザ菌)が原因の一つと考えられており、抗生剤の使用基準を厳密にする動きがあります。また、乳幼児期、特に3歳頃までは免疫機能が確立されないため、中耳炎が重症化する確率がやや高くなると考えられていますが、この時期における集団保育の関与も否定できません。
内服薬の中に感受性を持つ抗生物質がなく、中耳炎が遷延して発熱の原因となったり、肺炎などの合併症が生じている場合には、入院による点滴治療を行うこともあります。

滲出性中耳炎

滲出性中耳炎とは、耳と鼻の奥をつないでいる耳管の機能不全や、副鼻腔炎、アデノイド増殖症といった鼻の病気が原因で、鼓室(鼓膜の奥の空間)に滲出液が持続的に溜まります。急性中耳炎とは異なり痛みがほとんどなく、多くは軽度の難聴や違和感、耳閉感を伴いますが、無症状の場合もあります。
幼児期や学童期前半までのお子さんに多く、10歳を過ぎると自然に軽快することがほとんどですが、放置すると鼓膜が薄くなり、鼓室の壁と癒着してしまう癒着性中耳炎や、鼓膜が鼓室の奥に陥凹してできる真珠腫性中耳炎になる可能性があります。
治療は抗生剤(マクロライド系)の内服や粘液調整剤の投与や、耳管から鼓室に空気を送る通気療法が行われます。保存的な治療で改善しない場合には、鼓膜を切開して貯留液を吸引除去していきます。
何度切開しても貯留液が溜まる場合には、鼓膜に換気用のチューブを留置します。副鼻腔炎やアレルギー性鼻炎、アデノイド増殖症が原因となっている場合には、それらの治療も並行して行います。

慢性中耳炎

慢性中耳炎とは、急性中耳炎の遷延や外傷などによって生じた鼓膜の穿孔が閉鎖せず残存して起こる中耳炎です。元来、鼓膜は再生能力の強い器官であり、生じた穿孔は自然に閉鎖することがほとんどですが、炎症などが原因で自然閉鎖できない場合があります。すると、鼓膜の裏側(中耳腔)が外気にさらされてしまい、慢性の炎症が持続します。
症状としては、鼓膜の穿孔による難聴(伝音難聴)、炎症による耳だれです。炎症が長期化すると、粘膜の肥厚や石灰化によって音を伝える耳小骨の可動性が低下し、難聴が進行します(伝音難聴)。また、振動を電気信号に変換する器官である蝸牛の機能も炎症によって徐々に低下する場合があります(感音難聴)。伝音難聴と感音難聴が重なった混合難聴を引き起こすこともあります。耳だれは風邪をひいていたり、体調が悪い時に出てきます。病変が鼓膜に限局している場合、手術による鼓膜の閉鎖(鼓膜形成術、接着法)が必要です。耳小骨に障害がある場合は、鼓膜から蝸牛への音の伝わり方を変える手術になります(鼓室形成術)。耳だれが継続して起きている場合には、まず内服薬や点滴で耳だれを止め、その後手術をすることもあります。手術時間は、鼓膜形成術の場合30分程度で終わり、入院期間は2日間程度です。鼓室形成術の場合は、状態にもよりますが1時間半~2時間程度で手術が終わり、入院期間は4~5日間程度になります。いずれの手術も、局所麻酔で行うことがほとんどです。

癒着性中耳炎

癒着性中耳炎とは、鼓膜の中の空気が失われて、鼓膜が中耳腔の壁に癒着してしまう中耳炎です。原因は、中耳腔の慢性炎症が持続すること、耳管機能が悪く鼻から耳に空気を送れないこと、逆に耳管開放症に伴う鼻すすりで中耳腔の空気を故意に抜いていることなどが挙げられます。
発症すると中耳腔の自浄作用がなくなりますので、耳漏や耳の痛みを繰り返します。高度な伝音性難聴を伴いますが、慢性化すると感音性難聴も進行し、耳鳴り、めまい、頭痛なども起こってきます。
治療では、まず基礎に存在する耳管機能の問題を診断します。耳管の狭窄の場合は耳抜きのトレーニング、耳管開放症が存在する場合は生食点鼻による鼻すすりの回避を行います。これらがクリアされたら手術に移ります。ただ、癒着した鼓膜を元の位置に戻すだけでは必ず再癒着してしまうため、聴力も改善しません。鼓膜の癒着は裏面の正常粘膜を失うと周囲に癒着します。わずかに中耳腔に残っている正常粘膜をシリコンシートで鼓室全体に誘導し、きれいな含気腔を作ります。その上で破壊された耳小骨を再建していきます。

好酸球性中耳炎

好酸球性中耳炎とは、中耳の粘膜に血球の一つでアレルギー疾患と関連がある好酸球が浸潤し、にかわ状の滲出液が溜まる中耳炎です。難治性で慢性副鼻腔炎やアレルギー性鼻炎、気管支喘息が合併していることが多いです。
にかわ状の硬い貯留液が中耳腔に溜まることにより、難聴(伝音難聴)や耳閉感、耳鳴りなどが生じます。特に喘息の発作時に増悪しがちで、発作の軽快とともに耳の症状が治まることが多いです。しかし、中には内耳に障害を与え、治癒不能な難聴(感音難聴)を引き起こすケースもあります。
治療では貯留液を除去するため、鼓膜切開や鼓膜換気チューブ留置を行います。また、ステロイドの鼓室内投与や全身投与も効果的です。感音難聴が生じた場合も、ステロイドの投与を行いますが、必ずしも聴力改善が認められるわけではないので注意が必要です。また、多くの場合に気管支喘息を伴うため、内科や呼吸器科の医師との連携も重要となります。喘息の治療を行っている方は、自己判断で治療を中断せず医師の指示に従ってください。

真珠腫性中耳炎

真珠腫性中耳炎とは、鼓膜の一部が内側(中耳)に陥凹して起きる中耳炎です。先天性真珠腫の場合は鼓膜に関係なく中耳に存在します。その名前から腫瘍と勘違いされやすいのですが、腫瘍ではありません。
鼓膜の表面は外耳道の皮膚と連続しているため、角化物(垢)が出ます。通常、その垢は皮膚の自浄作用により外側に耳垢として排泄されますが、鼓膜が陥凹するとその内側に角化物が溜まりやすくなります。この角化堆積物が、細菌や真菌の培地となって感染や炎症が起こります。この炎症により、周囲の骨を破壊しながら増大していきます。
真珠腫性中耳炎で音を伝える耳小骨や音を電気信号に変える器官である蝸牛が壊されれば、難聴になります。特に、蝸牛の機能の低下を手術で治すことは今のところ不可能です。また、平衡感覚を司る半規管が破壊されると、めまいが起こりやすくなります。
中耳には顔面神経が走行していますので、真珠腫によって顔が曲がってしまうこともあります。また、炎症によって臭いのする耳だれがよく出るのも特徴です。
治療は、基本的には手術による真珠腫除去です。鼓膜の陥凹が浅い場合には、経過を観察したり、鼻からカテーテルによって空気を送る方法(通気療法)を選択する場合もあります。手術の場合は5~6日間の入院で行うことがほとんどで、手術時間は病変の程度により変わりますが2~3時間程度です。手術中にめまいが生じる危険がないと思われる症例に対しては局所麻酔で行います。

内耳に原因のあるもの

突発性難聴

突発性難聴とは、突然の蝸牛(内耳)機能低下によって生じる難聴の中で原因不明のものの総称です。考えられている原因としては、血流不足やウイルス感染、自律神経障害などがありますが、まだはっきりとは証明されていません。突発性難聴は蝸牛機能の低下のため、外科的な治療方法では治癒しません。そのため、点滴や内服薬などで治療することがほとんどですが、治療しても症状が残存する場合もあります。
症状は、突然生じる一側性の難聴、耳鳴り、めまい、耳閉感などです。低音障害型では、初期のメニエール病との鑑別が難しい場合があり、また聴神経腫瘍が原因で突発性難聴のような症状が出現する場合もあります。外傷などにより内耳内の外リンパ液が漏れ出す外リンパ漏でも、蝸牛機能が低下することがあります。
まず視診で鼓膜の異常の有無を調べ、純音聴力検査で難聴のタイプを判断します。加えて、眼振(めまいが生じている時に出る異常な目の動き)を見たり、必要に応じて脳や聴神経に異常がないかを調べるためにCTやMRIを撮るケースや、聴性誘発検査(蝸牛機能を調べる検査)を行います。
治療は、難聴の程度などにもよりますが、主にステロイドを用います。一定量のステロイド剤を数日間投与した後、徐々に減量する漸減療法が一般的です。低音障害型では自然に軽快する場合もあり、ステロイド剤が必要ないこともあります。同時にビタミン剤や代謝賦活剤、循環改善剤、自律神経調節剤なども使用し、星状神経節ブロックや高圧酸素療法を施行する場合もあります。

メニエール病

メニエール病とは、難聴や耳鳴りを伴うめまい発作が繰り返して出現する病気です。平衡感覚をつかさどる前庭・半規管の中には内リンパ液が存在しますが、その内リンパ液が何らかの原因で異常に多く貯留し、前庭・半規管機能が障害されることで発症すると考えられています。鼓膜の振動を電気信号に変える蝸牛は前庭とつながっているため、めまいに伴って難聴や耳鳴りも出現します。
症状は、繰り返す回転性のめまい発作と、それに伴う難聴(特に低音部)や耳鳴りです。
難聴や耳鳴りはめまいが治まると改善されることが多いですが、発作を繰り返すにつれ、徐々に増悪することもあります。
軽症の場合には、抗めまい剤や利尿剤の一種(イソソルビド)などの内服で症状が緩和されます。その他、循環改善剤や自律神経調節剤、めまいに対する不安を抑えるために精神安定剤を使用することもあります。これらの薬剤で症状が改善されない場合、鼓室(鼓膜の奥の空間)にある種の抗生物質(ゲンタマイシンなど)を注入する方法もあります。
これらの治療が無効でめまいがひどく、日常生活が高度に障害される場合には、手術的な治療を選択することがあります。内リンパ嚢は蝸牛や前庭・半規管内の内リンパ液の吸収に関与していると考えられています。内リンパ嚢開放術でこの内リンパ嚢を開放することで、増加した内リンパ液を減少させて症状が改善されます。また、前庭・半規管からの信号は、前庭神経を通じて脳に送られます。前庭神経切断術でこれを切断し、めまいの原因となる前庭・半規管からの異常な信号を遮断することで症状を減少させます。難聴が高度の場合、前庭・半規管からの異常信号を除去する目的で、これらの器官を削開除去する方法があります。ただ、聴力は廃絶してしまいます。

低音障害型感音難聴

低音障害型感音難聴とは、低音部の周波数のみが聞こえにくくなる病気です。突然、「耳に水が入って詰まったような感じ」「耳抜きをしたくなる感じだが、耳抜きをしてもスッキリしない」「音が耳にビンビン響いたり、割れて聞こえて不快」「ゴーという、低くうなるような耳鳴りを感じるが、聞こえは悪くない」という状態になります。原因は不明ですが、強いストレス、睡眠不足、疲れや体調不良などをきっかけに、繰り返し起こるようになります。基本的には特別な治療をせずとも自然に回復しますが、同様のきっかけで繰り返します。半日くらいで自然に回復することもありますが、2週間ほど長引くこともあります。症状が2~3日続く場合には受診してください。治療では、耳の神経の調子を整える目的でビタミン剤や耳のめまいの薬などが使われます。

遅発性内リンパ水腫

一方の耳の内耳に何らかの原因で高度難聴をきたしてから数年~数十年経過した頃に、メニエール病と同様のめまいが出現する場合があります。この場合、高度難聴側の三半規管が不安定になる同側型と、反対の耳の三半規管が不安定になる対側型があります。いずれにせよ、グリセロール検査や蝸電図検査が陽性になり、内リンパ水腫の存在が示唆されます。治療はメニエール病に準じますが、対側型は最終的に両側が高度難聴に進行する場合もあります。

ウイルス性難聴

難聴を起こす可能性のあるウイルスとしては、ムンプスウイルス、水痘帯状疱疹ウイルス、麻疹ウイルス、風疹ウイルス、サイトメガロウイルスが有名ですが、他にもEBウイルス、インフルエンザウイルス、アデノウイルスといったさまざまなウイルスが聴力低下の原因となります。
ムンプス難聴は、ムンプス感染患者の約2万人に1人の割合で発症し、特に10歳以下のお子さんに発症することが多いです。一側の高度難聴を認め、約半数の症例でめまいを伴い、多くは聴力予後不良となります。
水痘・帯状疱疹ウイルスによる難聴は、軽度の場合は回復する傾向にありますが、高度の場合は予後が悪い場合が多いです。
麻疹ウイルスによる難聴は、麻疹患者の0.1%以下で、多くは小児期に両側罹患します。
また、妊娠3カ月以内に母親が風疹に罹患した場合、出生児に難聴・心疾患・視覚障害・精神発達遅滞を伴う先天性風疹症候群が生じることがあります。妊娠6~9カ月に風疹に感染した場合、出生児の10~20%近くに難聴が生じるとの報告があります。通常、感音性難聴は両側性で、その程度は高度です。今のところ決定的治療法がないため、風疹ワクチンによる予防が大切です。
サイトメガロウイルスによる難聴も胎生期感染が問題となります。これは出生児の1~2%にみられ、その中の1~2%に内耳、脳、眼、肝臓、脾臓などの異常が認められます。先天性サイトメガロ症といわれています。
難聴は両側性で高度のことが多く、10歳まで進行するケースがあると報告されています。また、成長とともに軽度から中等度の難聴が両側性に生じることを10%程度に認めるとの報告もあります。

自己免疫疾患

自己免疫疾患とは、本来異物を認識して排除するために身体に備わっている免疫系が、自身の正常な組織まで異物として認識していまい、過剰に反応し攻撃を加えることで起こる病気の総称です。発症すると全身に広く影響が及ぶ場合と、ある特定の臓器だけが侵される場合があります。
全身性の自己免疫疾患である、唾液や涙の分泌が低下して乾燥感を訴えるシェーグレン症候群、鼻を中心に粘膜や軟骨などが侵される多発血管炎性肉芽腫症、口内炎が多発するベーチェット病などは耳鼻咽喉科を受診した際に見つかることがよくあります。特定の臓器に限局する自己免疫疾患には、甲状腺の機能が亢進するバセドウ病や、逆に低下傾向を示す橋本病(慢性甲状腺炎)などの甲状腺疾患があります。最近では、進行性の難聴の原因として内耳自己免疫病が注目されています。
自己免疫疾患の治療法は病気の種類、重症度によりさまざまで、軽症では経過を観察するだけの場合もあります。進行度によってはステロイド、免疫抑制剤などで免疫系全体を抑え込むこともあります。

騒音性難聴、音響外傷

騒音下での作業などで長期間に渡り騒音に曝されているうち、徐々に進行する難聴を騒音性難聴といいます。また、爆発音やロックコンサートの演奏など、強大な音によって急に起こる難聴は音響外傷といいます。難聴に加えて耳鳴りを伴い、めまいが生じることもあります。
難聴の程度を調べるために聴力検査が必要となります。初期状態では4,000Hz(ヘルツ)に特徴的なC5dipと呼ばれる聴力低下像がみられるため、比較的容易に診断できます。また、騒音性難聴の診断には、騒音下作業の職歴の有無が有用です。
音響外傷にはステロイドが有効です。なお、長期間の音響被ばくによって生じた騒音性難聴でダメージを受けた有毛細胞を元に戻すことは現在の医療では不可能です。難聴の進行を抑えるには、遮音性の耳栓を使用したり、長時間の音響被ばくを避けたり、耳を休ませる習慣をつけたり、規則正しい睡眠や適度な運動を心がけることが大切です。また、定期的に聴力検査を受けて、難聴が進行していないかどうかを確認することも重要です。

治療

耳鳴りの原因となっている基礎疾患があれば、まずはその治療を優先して行います。原因のはっきりしない耳鳴りや、基礎疾患が治ってからも耳鳴りのみが続く場合には、耳鳴そのものが治療の対象となります。
耳鳴りの治療では、まず耳鳴りに対する過度の心配を取り除いていきます。耳鳴りを止むことを期待するのではなく、鳴っていても聞き流せばいいと考え方を変えていくようにします。中等症以上では、音響療法を行いますが、これは静寂を避けることが目的です。スマートフォンをお持ちの場合は耳鳴りの治療用のアプリでノイズを聞く、BGMとして音楽や自然音などのCDを流しておくという方法の他、専用の雑音発生機能付きの補聴器を装着することも有効です。難聴がある場合は、補聴器を装用して日常の環境音を聞こえるようにすることも音響療法になります。
耳鳴りによる日常生活への支障のレベルが強い時は、さらに専門的なカウンセリングや抗うつ剤などを使用することもあります。

よくある症状メニュー一覧
フタッフブログ お問い合わせ 患者様からのお便り マスコミ各社の報道 学術的活動 リンク集