ブータンでの第5回ボランティア手術
当院では現在ブータン王国でボランティアによる中耳手術を行っています。3年を1クールとして計画し、去年までの3年間に計4回約100耳の手術を行って第1クールを終了しています。過去4回とも首都のティンプーで行っていましたが、今回は2月23日~28日の6日間の日程で、パロ空港から南へ車で約5時間、インドとの国境の町プンツォリンで手術を行いました。この病院には耳鼻咽喉科医師の常勤がいないため、スタッフも含めブータン関係者全員がティンプーからプンツォリンにやってきました。初めての地方の町での活動ということで、まずは下見を兼ねて日本からは院長、副院長、看護師長の3名、そしてブータン関係者数名での活動となりましたが、結局3日間の手術日程で計23耳の手術を行っています。今回の手術では、手術器具を直接医師に手渡す介助をすべてブータン人のスタッフで行っています。また3耳の手術をブータン人医師に行ってもらいました。介助するスタッフに関しては既に大体の作業内容を把握しており、指導はほとんど不要になりました。医師に関しても、少しずつではありますが低侵襲での手術法を獲得しつつあります。この第2クールの3年で一人立ちができるよう彼らをサポートしたいと思っています。
手術室
第162回日耳鼻宮城県地方部会学術講演会参加
日耳鼻宮城県地方部会は、宮城県の耳鼻咽喉科の先生方が参加する学会で、年3回(東北地方の6地方部会が合同で開催する連合学会を含めると4回)開催されます。臨床の第一線で診療されておられる開業医の先生方も多く参加され、熱のこもった議論が展開されます。今回は、慢性穿孔性中耳炎の再手術例に対する術後経過について報告しました。もちろん手術は1回で成功することが理想ですが、現実的には術後の鼓膜再穿孔や難聴再燃により再手術をせざるを得ない例があります。今回はそのような例での術後経過について検討し報告しました。
第25回日本耳科学会総会学術講演会参加
日本耳科学会は、耳鼻咽喉科領域の中で耳の疾患を中心に診療、研究されている先生方が発表や議論をする学会です。今年は長崎大学耳鼻咽喉科の髙橋晴雄教授が会長となり、長崎ブリックホールにて開催されました。当院からは、軽症の真珠腫性中耳炎に対する新しい術式の報告、そして当院で行っている耳鏡(耳内を観察処置するときに使用する筒状の器具)内での鼓室形成術の際に行う鼓膜形成手技の改良に関する一般口演を行いました。長崎というややアクセスに難がある地での開催にもかかわらず多数の先生方が参加され、それぞれの分野で活発な議論が行われていました。
AAO-HNSF 2015
今年で9回目を数えるアメリカ耳鼻咽喉科学会(AAO-HNSF)での教育講演のために、アメリカはテキサス州ダラスへ兵庫医科大学の阪上雅史教授とともに行ってきました。例年この教育講演は聴講料が必要(前売りで50~60$)でしたが、今回は若い耳鼻咽喉科医に積極的に教育講演へ参加してもらいたいという会長の意向もあり、聴講料は無料となったようです。そのためか我々の講演にも80名近くの先生が参加され、講演後も活発な議論が行われました。講演内容もその時々でのトピックを取り入れているため、初期のころと比べかなり変更されています。最近では耳科手術に積極的に内視鏡が導入されており、我々の鼓膜形成術接着法や接着法を基礎とした鼓室形成術における内視鏡下手術も紹介しました。 来年はサンディエゴ、もし講演申請が受諾されればまた新しい内容を取り入れ紹介していきたいと思っています。
講演終了直後。
(平成27年9月29日、ダラスにて)
ブータンでの第4回ボランティア手術
ブータン王国は、人口約70万人、面積が38400平方キロ(九州とほぼ同等)の小国で、一日2ドル以下で暮らす人が国民の25%を占める後発発展途上国(いわゆる最貧国)の一つです。
3年前より年1~2回、ブータンでのボランティア中耳手術を行っています。今回は4回目で、8月30日~9月4日の6日間、当院院長および副院長の他、久留米大学上田祥久先生、そして兵庫医科大学池畑美樹先生にご同行を賜り計27耳の手術を行ってきました。ブータンへは、タイのバンコク経由で半日~1日弱かかりますので、実際の手術期間は3日間ですが準備も含め約1週間ほどの行程となります。今回は、ブータンの医師にも手術を行ってもらいましたし、手術の介助も現地のスタッフに積極的に参加していただきました。回数を追うごとに彼らの手術の知識や手術に対する姿勢に向上を認め、驚くほどの進歩です。
次クールの3年で、彼ら自身で手術を行うことができるのではないかと考えています。
手術中
病院スタッフ、参加医師、看護師と
タイチームとのブータンボランティア手術
昨年より当院の主導でブータン王国でのボランティア中耳手術を行っておりますが、タイでは以前より自国内はもとより、隣国(ベトナム、ミャンマー、ラオス、ブータン等)でボランティアによる中耳手術を行っており、経験が豊富にあります。今回、このボランティア手術の中心人物であるDr. Phakdee Sannikornより副院長が招聘され、今年の4月26日~5月5日の日程でブータンでのボランティア中耳手術キャンプに参加してきました。
我々のボランティア手術の場合には、首都ティンプーにある国立病院の医師と連携して手術適応となる患者さんを集めてもらっていますが、このタイチームのキャンプは臨時の外来を設置しそこで手術適応となる患者さんを選択するところから始まります。そこで手術適応があればその当日または翌日に手術を行います。3日半の中で、4名の医師(ベルギー、オーストリアの医師(いずれも元大学教授)、Dr. Phakdee、副院長)により75名の手術を行いました。彼らのチームから学ぶところが多々あり、今後の当院のボランティア手術を続けていくうえで貴重な経験となりました。
参加スタッフ(眼科医も6名を含む)
ブータンでの第2回ボランティア手術
ブータン王国は、人口約70万人、面積が38400平方キロ(九州とほぼ同等)の小国で、一日2ドル以下で暮らす人が国民の25%を占める後発発展途上国(いわゆる最貧国)の一つです。東日本大震災の際に、ブータンの国王夫妻が福島に訪れ我々のために祈りを捧げ、ブータン人は被災者の方々と共にあると述べられました。我々はこの国に対しできることは何だろうと考えたときに、やはり我々の持っている中耳疾患に対する医療技術を提供することであろうという結論に達しました。そしてこのボランティアのために、賛同していただいた医師の方々、企業の方々に多大な経済的、人的支援をいただいております。前回、今回と合わせて6日間で50名以上の中耳手術を無償で行いました。今年を含め3年間を1クールとしてこのボランティア手術を継続していく予定です。
病院スタッフ、参加医師、看護師と
AAO-HNSF 2013
7年目となるアメリカ耳鼻咽喉科学会(AAO-HNSF)での教育講演のために、今回はカナダのバンクーバーへ兵庫医科大学の阪上雅史教授とともに行ってきました。ちょうどストームがやってきており荒れた天候でしたが、学会にはもちろん影響はなく1時間の発表を終えました。我々の行っている鼓膜形成術接着法では、鼓膜材料を接着させるためにフィブリン糊と呼ばれる生体由来の接着剤が不可欠となります。しかしこの接着剤は高価なため、アメリカでは中耳手術用として健康保険内での使用は認められておらず、また特に発展途上国では入手も困難なことが問題点です。現在フィブリン糊を使用せずに組織を固定する方法を考案中で、来年には新しい手法のある程度の結果も発表できるかもしれません。
講演終了直後。
(平成25年10月1日、バンクーバー(カナダ)にて)
IFOS 2013
5月末から6月初めにかけ、4年に1度開催される世界耳鼻咽喉科学会(IFOS)へインストラクターとして参加するために、韓国のソウルへ行ってきました。講演内容はアメリカでもお話しさせていただいている鼓膜形成術接着法です。アメリカで6年間兵庫医大の阪上雅史教授とご一緒に講演をさせていただいて、次第に接着法が世界で認識されつつあることを感じております。今回の講演は、朝8:00スタートであったにもかかわらず約30名の先生方に聴いていただきました。このインストラクションコースは有料ですので、内容に興味を持った先生方が参加されたと思われ、講演後の質疑応答でも多数の質問をいただきました。やはり”継続は力なり”が実感された5日間でした。
副院長講演中
タイトル
第22回日本耳科学会総会学術講演会参加
年1回開催される日本耳科学会は、耳鼻咽喉科の中で耳の疾患に特化して診療、研究されている先生方が発表や議論をする学会です。今年は新しい試みとして、教育講演やシンポジウム、パネルディスカッションなどの演者を会員から公募して行いました。当院からは、鼓膜形成術接着法の教育講演と外傷性鼓膜裂傷に対する手術成績の一般口演を行いました。今回の演題数も多数にわたり、抄録集も分厚いものになっております。この時期は秋の学会シーズンとなっており、診療時間等の変更があり患者さまにはご迷惑をおかけしますが、医療進歩のためには不可欠なものであります故、なにとぞご容赦願いたく思います。